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世界の美しさで目が灼けるような日だった。

276: 癒されたい名無しさん ID:kaiiNWiV

遠藤周作「死海のほとり」より
(第二次世界大戦末期、収容所にて)


あの日は前日に雨が降って、朝の点呼の時に地面には水溜りや小さな沼ができていて、
その水溜りには労働監督に追い立てられながら整列した囚人たちの影がうつっていました。
彼等から離れた場所に小柄な男が立たされていて、我々にも彼が何のためにそこに
立たされているのか、もうわかっていました。それは他のバラックから脱走した囚人で、
これから見せしめに飢餓室に連れていかれるのでした。
男は泣いていましたが、我々にはどうすることもできなかった。
戦争はいつ終るかわからず、終ることがわからぬ以上、自分たちと、今、
殺される彼の運命とにどんな違いがあると言うのでしょう。

…皆はただ空虚な疲れはてた眼で雨あがりの空の遠くを見ていました。
ナチの職員や親衛隊の前では決して目立たぬことが、この収容所で生きのびる
もうひとつの方法だったのです。

背広の独逸人が男の肩を押して歩くように命じ、労働中隊が作業場に向って歩きはじめた時、
囚人の列から眼鏡をかけた誰かが離れて進んでいきました。…彼は拳を口にあてて
咳をしながら、背広の独逸人と親衛隊の将校に脱走者を指さして何か話しかけていました。
やがて彼は二人に連れられて、ゆっくりとその場から姿を消しました。
…雨はやんでいたものの、鉛色の空の下を家畜の群れのような列が動きはじめ、
何事もなかったようでした。







277: 癒されたい名無しさん ID:kaiiNWiV

しかしその日の夕暮、我々は今朝の目立たぬ出来事が何だったかを知りました。
独逸人に話しかけた眼鏡の囚人はマディという神父で、自分を身代わりに飢餓室に入れ、
代りに脱走者を助けてくれと申し出たというのです。

この話を次々に聞いた囚人たちの表情は別に変わりませんでした。しかし、その夕暮、
バラックの窓から鉛色の空が割れて、ようやく暗い燃えるような空がのぞき、
そこから幾条かの光が有刺鉄線に囲まれた荒涼とした建物と監視塔にふり注いだ時、
我々はそれぞれの心のなかで、今、飢餓室にいるマディ神父のことを考えていました。
囚人の一人が、その時、呟いた言葉を私は忘れません。

世界はどうして、こう……美しいんだろう、と彼は言ったんです。

誰かが祈りだしました。祈りの低い声は小波のように一つのベッドから次のベッドへと
大きく拡がっていき……


スレ違い覚悟です。


287: 癒されたい名無しさん ID:JgCUFUu1

>>276
遠藤周作、俺も好き。

全然違う話だけど、事故で友達が死んだ日って凄く晴れた日だったんだ。
連絡受けて、電話を置いて、実感なくてポカンとしてて、
気づいたら窓の向こうの富士山を見てた。美しかった。
ほんとに、世界の美しさで目が灼けるような日だった。


288: 癒されたい名無しさん ID:DM2RF0bR

>>287

きっとご友人からの最後の贈り物だったんだよ。
青空を、富士山を見るたびに思い出して欲しいって。


>世界の美しさで目が灼けるような日だった。

詩的な表現だね。あなたの文才の欠片を感じる。



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[ 2014/05/29 10:01 ] 死別 | CM(0)

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